バレタインのおまじない

EUの会議の休憩時間中、俺がトイレから出て廊下を歩いていると、アーサーがロビーのソファーに座って大きくため息をついていた。

「何お前どうしたの?ため息なんかついちゃって」

俺はそう言ってアーサーに声をかけると、アーサーは俺に気づいたようで顔を上げた。

「ああ、なんだフランシスか。聞いてくれよ」

アーサーはそう言って話し始めた。
あいつがこうやって唐突に話しを始めるのはよくある事なので、俺も黙って話しを聞く。

「実は、昨日のバレンタインの日に菊にチョコを渡しに行ったんだけど、菊に渡したチョコの中に俺の自作の惚れ薬を入れといてさ」
「最低だなお前……」

俺は思わず右手を頭にやった。
好きな奴にあげるチョコの中に惚れ薬を入れるなんて、菊にこの前貸してもらったマンガにあったような事を本当にする奴がかなり身近に居たことに正直呆れた。

「で、だ。俺は惚れ薬の力で

『アーサーさん、大好きです……』
『菊……』

という感じでバレンタインを過ごす予定だったのに、昨日1日菊の家に居たんだけど全然効いてなくてさ、惚れ薬は完璧だったはずなのに、何でダメだったのか分かんねーんだよ」

アーサーは話し終えるとまたため息をついた。

アーサーの話を聞いてて思ったんだけどさ、それってつまり惚れ薬は自分が惚れてる奴から貰ったものを食べても効かないてことじゃないの?
だってお兄さんだって菊にチョコあげようと思って14日の予定を訊いたんだよね。

「どう?菊、お兄さんのチョコ美味しいよ」

でもその時

「ありがたいお話なのですが、ごめんなさいフランシスさん。その日は大切な人が来る予定なんです」

って断られてるんだよなー

「な、なんだよそんなにジロジロ見て」
「いや、別に?お兄さん先戻るわ」

俺はそう言って会議室へと足を進めた。

でも俺と違ってアーサーは菊の家に行っているということは、菊の大切な人はアーサーってことになる訳で。
その事、コイツに教えてやってもいいけど、そんなのムカつくし。

それに、俺だって菊のこと好きなんだよね

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バレンタインということで、バレンタインネタの小説書いてみました!
去年は間に合わなかったので今年はリベンジしましたよ!

フラ兄視点ですが一応英日です
英日←仏みたいな関係ですね